心臓移植・補助人工心臓植え込み治療を受けるための《条件》

重症心不全の人が誰でも、心臓移植や補助人工心臓の植え込みの治療を受けられるわけではありません。

​さまざまな条件をクリアした人のみが、数々の審議を経て、受けられる治療となります。

※補助人工心臓は、心臓移植登録が完了していないと保険適応になりません。

 自費診療で手術を受ける場合は3,000万円〜6,000万円程度かかります。

① 65歳未満​で心疾患以外の病気にかかっていない

心臓移植は他人の臓器をもらうしか方法がないので、いただいた臓器を大事に長く使わせていただくために、心臓以外はどこも悪いところがない状態でないと、対象外となります。

​心不全にや肺高血圧症などによって、肺の状態も悪い場合は、心肺同時移植の適応となる場合もあります。

そのため、移植希望登録をする前に、たくさんの血液検査や胃カメラ・腸カメラ、エコーや全身CT・MRIの検査を行います。

② 24時間・365日家族の誰かが患者本人に付き添うことができる

​補助人工心臓は、弱り切った心臓を助ける機械ですので、常に止まることなく動かなければならない機械です。

しかし、機械だとしても100%動き続けるとも限りません。機器の異常・人的ミス・衝撃などで、ポンプが停止する場合も考えられます。

ポンプが停止すると、一瞬で全身に血流がいかなくなり、意識を失うことが予測されます。

また、血流が止まることによって、血栓ができて脳梗塞や肺塞栓などを起こしやすい状態となります。

そういった緊急時に、即座に対応できるように、機械の使い方を熟知していて、すぐに病院や救急車の手配ができる人(介助人)常にそばにいなければなりません。

メインの介助人は基本的に18歳以上の親族でないとなれません。(自宅療養する場所に介助人が2人以上必要)

それに加えて、学校に通ったり仕事に行ったりする場合は、教員や職場の上司や同僚にも介助人になってもらう必要があり、途切れなく付き添わなければなりません。

一緒に外出する友人に介助人になってもらうこともできます。

介助人になるには、補助人工心臓の仕組みを理解し、機器の取り扱いの講習・緊急時の対応のテストなどをクリアしたのちに、心不全・心疾患についての教育や、栄養・服薬指導などを受けなければいけません。(基本的に平日の日中)

また、外出訓練や外泊訓練などの退院のためのトレーニングがあるため、介助人である家族は、平日に仕事の休暇を取れる状態でなければなりません。

③ 乗り物の運転ができない

上記のように、突然意識を失う可能性があるので、自動車の運転はできません。

自転車やバイクも転倒のリスクがあるので、乗ることができません。

転倒すると機械が故障するかもしれないし、出血したら大変だからです。

(血栓ができないようにワーファリンで血をサラサラにし続けているので、ケガは禁物。)

転倒のリスク…。動いている限り転倒のリスクありまくりやん!って思いますけど。そういう屁理屈はナシで…。

④ 飛行機・船に乗れない

飛行機も船も、緊急時に急に降りることができないので、乗れません。

主治医がやむを得ない理由で認めた場合だけOKです。

新幹線は2時間以内の範囲ならいいらしいです…

​ヘリポート付きのフェリーで衛星電話もってたらいいんか?って聞きたいところですが、

1周20分くらいかかる大観覧車に乗ろうとしたら止められたんで、多分ダメでしょう!!

⑤ 宿泊を伴う外出ができない。
  補助人工心臓の手術を受けた病院から2時間で移動できる範囲内での移動に限られる。

補助人工心臓は、精密な医療機器ですので、アース付きの3Pコンセントが必要となってきます。

日本のコンセントはだいたい2Pなので、住む家のコンセントの改修が必要です。(寝室に2本させるように)

​ホテルに3Pコンセントを備え付けている所があればいいんですが、あまり見たことないし、問い合わせても多分通じないので、宿泊はキッパリあきらめましょう!

日帰りでも、原則2時間の移動に限られます。何かあった時のために。

​…名前のごとく、「はるか」彼方へぶっ飛ぶのが好きな私にとっては、ただの苦行です。

⑥ 「運動」は「歩く」のみ

補助人工心臓の命綱であるドライブラインを、移植手術を受けるまで(5年〜7年)良好な状態に保たなければいけないので、腹部を曲げたりひねったりする運動ができません。

そして、衝突や転倒してもいけないので、そう考えると、スポーツはできません!!

移植手術を受けるためにも体力づくりが必要なので、運動をしなければいけないんですが、「歩くしかできない」っていうのは、常に介助人が必要で、固定の職場があるわけでもなく、登山好きでもない私にとっては、なかなかハードルが高いです…。

子供の頃から趣味は一人徘徊なので。

⑦ 浴槽につかれない。シャワー浴のみ。

直接身体の内部につながっているドライブラインに菌がつかないように、清潔に保たなければならないので、ばい菌の多い浴槽にはつかれません。

というか、滅菌していない水が刺入部に入らないように、フィルムのドレッシング材で防水してシャワーを浴びます。

 

​毎日のことなので、1ヶ月で考えると、ものすごい量のガーゼとドレッシング材を使っております。

​そして、長年刺入部まわりをジャバジャバ洗えません。なんか逆にかゆいです。

⑧ 臓器搬送費・医師派遣費・自身の移動費をいつでも準備することができる。

自分に合うドナーが、いつ・どこで現れるかわかりません。

移植医療は、臓器提供者の意志によって成り立っていますし、

一応、移植希望登録日順に順番待ちしていますが、血液型やリンパ球、体格の違いなどによって、順番を抜かしたり抜かされたりするので、本当にどのタイミングで電話がかかってくるかわかりません。

移植できる臓器にはタイムリミットがあるので、摘出した臓器を、チャーター機やヘリで迅速に移植手術を受ける病院に運ばなければならないので、その費用は自己負担となります​。医師の渡航費も負担します。

だいたい600万〜800万円程度がその時すぐに必要となってきます。

​さらに患者自身も、移植手術を受ける病院から遠方の場合はチャーターしなければなりません。

⑨ 体調・薬・消毒の自己管理ができる。
  自身の病気・薬について学ぶ意欲がある。

補助人工心臓を入れてからは、本当に多くの合併症が付きまといます。移植後には移植特有の合併症があります。

それを防ぐために、決められたとおりにきっちり薬を飲んだり、消毒をする必要があります。

​〈補助人工心臓の合併症〉

1.  血栓塞栓症…身体の中に人工物が入っていることで血が固まりやすくなって血栓ができてしまう。

 

そのなかでも怖いのが脳梗塞。頭痛やめまい、視界の一部が欠ける、しびれや麻痺、吐き気・嘔吐、言葉が出にくい、けいれんするなどの症状が出ます。早期発見・早期治療につながった場合は、麻痺や障害される部位も限定的で回復も見込まれますが、長時間放っておくと、取り返しのつかないことになります。

 

​2.出血…血栓塞栓症を予防するために飲んでいるワーファリンなどの抗凝固薬が原因。

 

簡単な出血では、内出血・鼻血・歯茎からの出血などがあります。外見から見える出血なら、長めの時間しっかり押さえることで止血できることが多いですが、消化管(胃・腸)出血や脳出血などの臓器の出血は外からはわからないので、日頃から体調の変化に注意する必要があります。

 

血便や血尿、吐血、また脳出血の症状である、頭痛や吐き気などにも注意が必要です。脳出血の場合も早期発見・早期治療が運命をわけます。

ちなみに私は、卵巣出血で一気に貧血が進行し、意識を失いました。そして2日間輸血し続けました。​気をつけてください。

 

3. 感染症…ドライブラインからの感染が、怖いです。

ドライブラインの刺入部は常に菌がいない状態が理想です。しかし、人間の皮膚には少なくとも菌がいますし、人工物には菌を防御する能力もないので、感染を起こしやすい部位となります。浸出液や出血、肉芽(コブみたいなの)ができてきたら要注意です。また、感染の兆候として、発熱や患部の発赤、痛みが現れることもあります。補助人工心臓はドライブラインの感染が大敵です!!即入院!

感染の状態がひどい場合はポンプ交換(手術のやりなおし)となります…。

4. 心不全…補助人工心臓はあくまでも補助です。補助していても心臓が弱ってしまう場合があります。

いくら補助人工心臓でサポートしていても、過労やストレスなどで、心臓がますます弱ってくる場合があります。

日頃から早寝早起き、1日3食決まった時間に摂るように心がけ、無理のないように毎日過ごしましょう。移植までの道のりは長いですから。

〈心臓移植後の合併症〉

1. 拒絶反応…移植の大敵。一生拒絶反応との戦いです。

他人のものを自分の身体に縫い付けるので、もちろん自分の免疫がはたらいて、拒絶反応をおこします。

せっかくいただいた心臓をきちんと自分の身体に定着させるために、免疫抑制剤を術後から大量に使用します。

発熱や全身倦怠感、むくみなどが症状に出ますが、気づかないことも多いので、落ち着くまで毎週心筋生検(カテーテルで心臓の細胞を採取する)をします。その後徐々に頻度は減っていきますが、一生心筋生検を受けます。

2. 感染症…免疫抑制剤の副作用として、免疫が弱まっているために、いろんな病気にかかりやすくなります。

はっきり言って世の中は菌だらけですから、マスクを常にして、手洗いも頻繁に、除菌のウエットティッシュが必携になります。

食べ物からも感染するので、なまものは厳禁。発酵食品もダメ。動物との接触も避けます。

⑩ 一生、禁酒・禁煙!

全身の臓器に影響を及ぼしますし、絶対に服薬しなければいけない薬の効き具合が変わってしまうので、退院しても禁酒・禁煙は絶対です。

バッチリ誓約書を書かされます★

⑪ 退院して回復したら、社会に貢献する意欲がある。

貴重な心臓をいただいて生きていくのですから、その命を無駄にしてはいけません。

 

生きたかったのに生きれなかった人の分まで、人生を大事にする。

そんな重大な任務を、移植を受けた人は一生背負うことになります。

​①〜⑧は補助人工心臓装着中の制限となりますが、生涯にわたって病気と向き合い続けなければなりません。

制限があっても、「生きたい!」という強い意志が必要です。

© 2019 by DCM nurse Haruka

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